Rieko Aizawa (Pf) - Scriabin & Shostakovich : 24 Preludes

Rieko Aizawa (Pf) – Scriabin & Shostakovich : 24 Preludes

Rieko Aizawa (Pf) - Scriabin & Shostakovich : 24 Preludes

「24」という数字をきいてまず思い出されるのは、バッハの「平均律」もしくはショパンの「前奏曲」かも知れません。すべての調性において、各調が持つ独特の雰囲気の微妙な違いを生かし、それぞれの調の作品を残す。この難題はしかし、難題であるがゆえに多くの作曲家を魅了し彼らの創作意欲をかきたててきました。

今回収録されている2作品はどちらも、ロシア作曲家がこの永遠のモティーフに挑んだ作品です。確かに、すべての調にはそれぞれ個性的な響があります。俗に、ト長調は清清しい、ニ短調は神々しい、などといわれますが、言語などでは到底表現し得ない非常に微妙な個性です。そのあまりに微かな差異はもしかすると、ミューズに選ばれた音楽的天才のみが明確に認識し共感できるものなのかも知れません。これを表現し録音するというのはまさに至難の業、ピアニストの力量はもちろん、その響を包括しうる空間(ホール)、そして録音技術の三つの要素がすべて秀でて揃っている必要があります。

この難業で初のソロ作品をリリースするという一見無謀とも思える大技をみせてくれたのは、ホルショフスキー最後の弟子であり内田光子が激賞するピアニストとして知られる相沢吏江子。初リリースとはいえ、コンサート活動においては、すでに「日本人ピアニスト」と表現するのをためらうほど国際的な賞賛を得ており、日本国内でのユニークな活躍も広く注目を集めています。

この録音も滋賀県栗東「さきらホール」の新プロジェクトとして話題となった【レコーディング& コンサート】の第一弾として製作されています。これは、ホール側がアーティストに最高のレコーディング環境を提供する代わりにコンサートではチケットを格安にし多くの人に聴いてもらうというもの。こうして今回のレパートリーでは必要不可欠だった極上の空間を得、また最高峰の録音スタッフのサポートもあり、若手の中ではぬきんでた力量と経験を持つ相沢がもてる才能と技術を注ぎ込んで完成させたのがこのアルバムです。

年間に数多くのピアニストがCDデビューを果たし、どの盤もかなりの高水準である日本のピアノ界ですが、内田光子以降、真に世界的なピアニストを輩出していないのも事実です。ホールの質、録音技術を含み、わが国のピアノ演奏史&録音史の存在を顕示しうるレヴェルの作品として、今回のこのリリースは大いに注目されるべき一枚です。


Scriabin : 24 Preludes
Shostakovich : 24 Preludes

Rieko Aizawa – Piano
17 & 18 November 2004 Ritto Bunka Kaikan “Sakira”, Shiga – Japan (Live, Stereo)

【ALT099-Green Series】(2005/5/10)